「あ、今年の松野神社のお祭りは……蓮と行けないかも」
毎年蓮と行っていたお祭り。断るのは気が引けるけど、今年は先約があるから仕方ない。いつも一緒に行く約束をしてるわけじゃなかったけど、気づくといつも蓮と行くことになっていた。
だけど今年は違う。
今年は水野君と行くんだよね。
なんだかまだ信じられない。想像するだけで思わずニヤけてしまう。
「そいつと行くんだ?」
「え?」
ズバリ言い当てられて、ごまかすことができずに小さく頷いた。
「ごめんね、いつも一緒に行ってたのに」
「や、いいよ。今年は俺もクラスのやつらと行こうと思ってたから」
「そうなの? それならよかった」
それから他愛ない会話を続けたけど、蓮はどこか上の空で心ここにあらずという感じだった。
人の話を聞いているようでぼんやりしてるし、意地悪なことも言ってこないし、なんとなく蓮らしくない。
さっきまで普通だったのに、どうしちゃったんだろう。
気になりつつも、勉強のしすぎで疲れてるのかな?と勝手に解釈して深くは聞かなかった。
「桃ちゃん、おはよう」
高校の最寄り駅に着き、改札を出て通学路を少し歩いたところで、ばったり麻衣ちゃんに出くわした。
「あ、おはよう」
今日の麻衣ちゃんもとても可愛い。
髪型は雑誌を見て勉強したんだろう。頭のてっぺんから耳の横にかけて編み込みがされ、下ろし毛はサイドでひとつに束ねられている。
ピンクの水玉模様の小さなリボンがついた可愛いゴムと、その髪型がとても似合っている麻衣ちゃん。



