「ふぅん」
認めたあとは、そっけない返事が返ってきた。そっけなさすぎて、拍子抜けしてしまうほどだ。
「どんなやつ?」
「え? それは秘密」
だって蓮に言うとか恥ずかしすぎるでしょ。だいたい、ちょっと気になるだけで好きっていうわけじゃないし。
「いいやつなの? そいつ」
「え?」
蓮にしては珍しく食い下がってくる。普段ほかの話題なら、ここまで聞いてこないのに。
きっと、私のことを心配してのことなんだろう。
「うーん……難しいな。ぶっきらぼうだけどなんとなく温かくて、でもなんだか闇がありそうな……そんな人、かな」
結局、抽象的に水野君のことを説明する羽目になってしまった。だって、あまりにも蓮の目が真剣そのものだったから。
なんだか言わずにはいられなくなってしまった。
「……そっか」
蓮はしばらく間を置いてから、囁くような小さな声を出した。さっきまでは真剣な表情をしてたのに、今はなんとなく元気がないように見える。
だけどそう見えたのは一瞬だけで、すぐに取り繕うようににっこり笑った。
「ま、なんかあったら相談しろよな」
「ありがとう。蓮も私に協力してほしいことがあったら言ってね。全力で力になるからさ!」
「あっても桃にだけは頼まないから」
なぜだろう。
そう言った蓮の表情が曇っているような気がする。



