「へー、いるんだ?」
かなり意外だ。言わないって言われたら、余計に気になってくるんだけど。
でも蓮は頑固だから名前は絶対に教えてくれないだろう。
私に言いたくないってことは、私の知ってる人?
うーん、気になる。聞きたいのに聞けないのが、すごくもどかしい。
「そういう桃はどうなんだよ。いるの?」
「私?」
好きな人……。
「い、ない……かな?」
水野君の顔が一瞬頭をよぎったけど、頭を振ってすぐに残像を打ち消す。
「なんで疑問系?」
「え、いや、べつに深い意味はないよ」
「なんか怪しいな」
「そ、そう……? そんなことないよ」
「本当にいなかったら、もっとあっけらかんとしてるだろ」
うっ、さすがは蓮。私のことをよく知っているだけはある。
好きな人……。
「いるんだ?」
蓮はなぜかしつこく私に詰め寄る。真顔で見つめられて、その目はなんだか私を責めているよう。
すごく気まずいんですけど。
「い、いないって言ってるじゃん……! 蓮って、へんなところでしつこいよね」
そうは言っても、いないって言ってる自分に少しだけ後ろめたさを感じる。
「いるんだ?」
「……っ」
こうなったら蓮は私が認めるまで問い詰めてくるに違いない。蓮の性格は私が一番知ってる。
「好きな人というか……気になる人はいる、かな」



