水野君ってこういうことも言うんだ?
なんだかますます掴めない人だな。
「誰と行くの?」
プライベートなことを聞くと『夏目には関係ない』って言われてきたから、きっとそう言われる。
それがわかっていても、ついつい聞いてしまうのは気になるから。
どうして気になるのかは、今は考えたくない。
「一緒に行ってやってもいいけど」
「えっ!?」
今、なんて言った?
聞きまちがいじゃないよね?
誰と行くの?って聞いて、こんな返事がくるとは思ってなかった。
なんでそんなに上から目線なのかはわからないけど、その言葉に浮かれている私がいる。
水野君にしてはぎこちなく遠慮がちな態度。恥ずかしいのか、ほんのり顔が赤いような気がするし。
あの水野君が……照れてる?
なんで?
信じられないよ。
っていうか、どうして私と?
わけがわからなくて少し戸惑った。
だけど嬉しくて、胸の奥からじわっと温かいものが込み上げる。
心臓の鼓動も激しさを増して、水野君の耳に届くんじゃないかと不安になった。
本気で言ってる?
っていうか、水野君はどこに行くつもりでいるんだろう。
海?
花火大会?
「どうなんだよ?」
「えっ、あ……」
至近距離で顔を覗き込まれた。水野君は背が高いから、屈むようにしてまっすぐに私の目を見つめる。
「ち、近いってば!」
その視線に耐えきれなくて一歩後ずさる。目を合わせていられなくなって、顔を伏せた。だけどひしひしと視線を感じて、心臓が口から飛び出しそうなほど恥ずかしい。