次の日、土曜日だったので勉強を教えてもらいがてら、百合菜の家にいた。
徒歩十分の距離にある百合菜の家は、私の住むマンションとはちがって住宅街の中にある一戸建て。それもただの住宅街ではなく、高級住宅街。中でも百合菜の家は、世界的に有名なデザイナーがデザインした超一流の高級住宅。
家の外観はロッジを思わせるような木造になっていて、赤い三角屋根の大きな家。中は和モダンを中心とした天井の高い造りになっている。
天窓からは眩しいくらいの光が差し込んで、開放感があってとても寛ぐ空間だ。
百合菜のお父さんはたくさんの不動産を持つオーナーで、お母さんは翻訳家。兄弟はおらず、私と同じ一人っ子。
百合菜は甘やかされて育ったわけではなく、どちらかというと厳しく育てられたらしい。だけどその中には愛情があって、苦しくはなかったって。
私が遊びにくると、百合菜の両親はとてもよくしてくれるし、優しくて笑顔が素敵な人たちだ。
百合菜の部屋は八畳ほどの広さで、茶色と白に統一されたインテリアに囲まれている。
女子高生にしては大人っぽいイメージの部屋だけど、明るい色だと落ち着かないとかでシックな感じになったんだとか。
百合菜の部屋のラグの上に座り、教科書とノートを開いてはいるものの、最初からあまりやる気のなかった私たちは案の定脱線していた。
それもこれも、全部水野君のせいだ。
「おかしくない? なんでこんなに気になるのかな」
「おかしくないよ」
百合菜とこうしてゆっくり話すのも久しぶりで、会うと今までのことが堰を切ったように勝手に口から放たれた。
こういう時、百合菜は黙ってじっと話を聞いてくれる。そして最後には納得のいくアドバイスをくれるのだ。
「えっ? おかしくない? なんで?」



