どうして?
なんでこんな気持ちになるの?
意味がわからない。
「やばくない? めっちゃカッコいいんだけど!」
「足も速いし、なにあのボールさばき!」
「プロ並みじゃない?」
きゃあきゃあと辺りが騒がしい。みんなの視線はグラウンドでサッカーをする男子に釘付けだった。男子というよりも、水野君といった方が正しいのかもしれない。
水野君は誰よりもひときわ目立っていて、グラウンドの中を走り回り、スペースを見つけてはパスを出したりシュートを打ったりして、さっきから何本もゴールを決めている。
そのたびに女子たちの歓声が上がって、体育の授業そっちのけでみんなが注目していた。
水野君は脇目もふらずにただまっすぐボールを追っていて、時々苦しそうに額から流れ出る汗を腕で拭っている。
そういえば、サッカーしてたって前に皐月が言ってたっけ。クラブユースの選手で、地元では有名人だったって。
こんなにうまかったんだ。
さっきからトクントクンと鼓動の音がとてもうるさい。私の目はひたすら水野君だけを追いかけている。意識しなくても自然と水野君を探してしまっている。
なんなんだろう、これは。どうしちゃったの、私。
なんだか変だよ。こんなのおかしい。
見るからダメなんだ、見ないようにしよう。
見ないように——見ないように。
「ほんとカッコいいよね」
「これでまた人気が出そう」
「言えてるー!」
コソコソと水野君のことを言っている声が耳に届く。
どうして私はこんなにモヤモヤしているんだろう。