「お前ら、実はデキてるんじゃね?」

クラスでもお調子者の男子がからかうように大きな声を張り上げた。それはクラス全体に響き渡り、周りの男子もニヤニヤしながら私の顔を見てくる。

「そ、そんなんじゃないから」

注目されていることが恥ずかしくて思わず赤面してしまう。これじゃ逆効果だというのに、どんどん顔に熱が帯びていく。

「赤くなってんじゃねーかよ」

「そうだそうだ、怪しいぞ」

「そ、それは……っ」

ムキになってなればなるほど、状況が悪くなっていくような気がする。

こんなことを言われて水野君だって嫌なはずだ。

「お前ら、くだらないこと言ってんじゃねーよ」

男子たちの冷やかしを、水野君の淡々とした声が遮った。冷ややかな目で睨みつけるようにクラス全体を見回す水野君。

その雰囲気に気圧されたのか、男子たちがたじろいだのがわかった。

教室内は水を打ったように静かになり、そこへタイミングを見計らった先生の声が響いて授業が再開する。

「さすがは水野だな、正解だ。まぁ水野にとっちゃこんな問題は朝飯前か」

先生の声に教室の中がまたざわつく。当の本人は素知らぬふりで、クラスのざわめきなんて聞こえていないよう。

どうやら水野君は勉強ができるらしい。

不意に目が合い、私は苦笑いを浮かべながら口パクで『ごめんね、ありがとう』と伝えた。

水野君は真顔でじっと私を見たあと、唇をゆるめてフッと笑ったかと思うと——

『バーカ』

私と同じように、口パクでそう言った。

整った横顔が優しい雰囲気をまとって、思わず釘付けになる。次第にドキンドキンと心臓が激しく動いて動悸がした。

なに、これ。

なんで水野君なんかにドキドキしてるの。