早く気づけよ、好きだって。


「春ちゃんが同じ学校の人と話してるのが珍しいなぁと思って、思わず突っ込み入れちゃった」

クスクスと笑うその子は「もっと優しくしてあげなきゃダメじゃん」と言いながら、水野君の背中を軽く叩いている。

そして改めて私の目を見つめてピョコンと会釈をして見せた。

「急に割り込んでごめんね。私は木下 瑠夏(きのした るか)って言います」

透き通るような可愛らしい声で、丁寧に挨拶をしてくれる。私も同じように会釈を返して、次に名前を名乗った。

彼女は私に嫌な顔ひとつすることなく、屈託のない笑顔を見せてくれた。その笑顔には悪意なんてまったくなくて、それだけでいい子なんだと悟ることができるほどだ。

正直、なぜだか負けたと思った。いや、なんの勝負をしているのかはわからないんだけど。

いつもなら女の子は大歓迎なのに、今日はなんだかそんな気持ちにならない。

「あ、私は春ちゃんとはただの幼なじみで、小学校からの友達なんだ」

ただの幼なじみ。

友達……。

ということは、付き合っているわけじゃないってこと?

ホッとしている私がどこかにいる。理由なんてわからないけれど、それだけで瑠夏ちゃんとは仲良くなれそうな気がしてきた。

って、なにそれ。意味がわからない。

「私たちは、ただ同じクラスで。でも、水野君って誰とも関わろうとしなくていつも一人でいるし、大丈夫かなぁって。そう思ったらなんだか放っておけなくて、一方的にからんでるの」

「俺はすっげー迷惑してるけどな」

「またそんなこと言って」

再び瑠夏ちゃんがパシンと背中を叩く。

「あ、いいのいいの。ほんと、私が勝手に仲良くなろうとしてるだけだから」