「ほらな、そういうところがそっくりなんだよ。ポジティブすぎるだろ」
「いいじゃん、ポジティブで。その方が人生楽しいんだしさ! ポジティブな人といたら、水野君もだんだんそうなっていくよ」
水野君はしばらく黙り込んだ。いい加減私に呆れ果てたのかもしれない。
「そういうの、マジうぜー」
「ウザいとか言わないでよ、傷つくじゃん」
「正論ぶつけてくる奴、嫌い」
「はっきり言うよね、はっきり」
グサグサと胸に突き刺さるんですけど。私は今まで特に大きな壁にぶち当たることもなく今日までやってきた。
困った時は蓮や百合菜や周りの人が助けてくれたし、友達もたくさんいて恵まれているんだと思う。
私の価値観で物事を押しつけちゃダメだったかな。
「まーた春ちゃんはそんな言い方してー! 後ろで聞いててヒヤヒヤするよ」
つり革につかまっていた水野君の後ろから、お嬢様学校の制服を着た小柄な女の子がヒョイと顔を出した。
黒髪のボブカットで、どこかあどけなさが残る満面の笑み。その子には見覚えがあった。
そう、映画館で水野君と一緒にいた子だ。
そういえばさっきの停車駅で、お嬢様学校の制服を着た子がたくさん立っていたっけ。きっとそこから乗ってきたんだろう。私は話すことに夢中で気づかなかった。
「なんだよ、急に」
ぶっきらぼうな言葉だけど、その視線はどこか優しい。きっとそれは水野君にとって特別な人だからなのだろう。



