「水野君の最寄り駅は? 私は月野だよ。兄弟は? 私はひとりっ子なんだけど、十組に幼なじみがいて、意地悪だけど頼れるお兄ちゃん的存在なんだ。私の好きな食べ物はフルーツで、その中でもぶどうが一番好き! 嫌いな食べ物は」
「あのさ」
「ん?」
うんざりした顔を向けられた。それに負けないくらいの笑顔を返し、首を傾ける。
ガタンゴトンと電車に揺られながら、私は懲りずに水野君にからんでいた。
「やっぱストーカーだろ?」
「やだなー、そんなんじゃないってば」
「じゃあ、なにが目的で俺にからむわけ?」
「目的? うーん……仲良くなりたいから、かな。前にも言ったじゃん」
「なんでそこまでして俺と仲良くなりたいわけ?」
なんだかんだ言いながらも、水野君も私に興味を持ってくれているのかな。
それとも本当に迷惑だと思ってる?
「仲良くなりたいって思うのに理由なんかないよ。なんだか放っておけないんだよね、水野君って」
「うぜー……」
あ、やっぱり迷惑がられてたのか。
「夏目のそのウザさ……あいつにすっげー似てる」
「あいつ?」
誰のことだろう。
友達?
「しつこくからんでくるところとか、マジでそっくり。いくら冷たくしても、全然へこたれねーし」
「へぇ、じゃあ私と水野君も仲良くなれるってことじゃん」
歯をむき出しにしてニヒヒと笑う。



