早く気づけよ、好きだって。


戸惑っていると再び急かされ、私はあたふたしながらも今度はまちがえることなくしっかりとホットココアのボタンを押した。

水野君は出てきたホットココアを取り出して私に差し出してくれる。

「あ、ありがとう」

「それ、かして」

「あ、うん」

まちがえて買ったブラックコーヒーの缶を水野君に差し出す。

私の手から缶を受け取ると、水野君はそれをスクールバッグの中に押し込んだ。

いいの、かな?

っていうか、意外と優しい?

普通なら素通りするレベルだよね。

「なんかごめんね。私、ブラックコーヒーって苦くてダメで。カフェオレなら、まだ飲めるんだけど。ほんと助かったよ」

申し訳なく思って手を顔の前で合わせた。水野君はそんな私にフッと口角を上げた。

トゲトゲしい雰囲気が少しだけ和らいで、いつもより優しく見える。

あの子に向けていた笑顔とは大ちがいだけど、なぜだか胸が熱くなった。

「バーカ」

水野君はそんな悪態をついてホームへ続く階段を上がっていった。

「ちょっと、待ってよ」

慌ててあとを追い、隣に並ぶ。私と水野君では歩幅がまったく違って、小走りでついて行くような形になる。

「ついてくんなよ」

「いいじゃん、私もこっちなんだから」

優しいと思えば突き離したり、冷たかったり。本当の水野君はどこにいるの?

知りたいよ、もっと——きみのことが。