六月下旬、先週梅雨入りしたらしく、ジメジメとしたスッキリしない天気が続いていた。そして今日は朝からザーザー降りの雨模様。灰色の分厚い雲が空を覆って、朝だというのに外は薄暗い。

登校中にローファーの中にまで水が染みて、靴下がビチョビチョになった。

靴下だけじゃない。横なぶりの雨だったので、ほぼ全身が濡れてしまった。

こんな日は朝からとても憂うつで、登校してまだ数分しか経っていないのにすでに帰りたい気分。

替えの靴下を持ってくるのを忘れたから足先も冷たいし、そのせいなのか身体が冷えてしまっている。

とりあえず濡れた靴下を脱いで裸足になった。そしたらいくらか寒さは和らいだ。

皐月はまだ登校していないようで、珍しく今日は水野君が先にきていた。

今きたところなのか、机の上にカバンが置かれたままになっていて。当の本人はタオルで髪の毛をわしゃわしゃ拭いている。

柔軟剤のいい香りが漂ってきた。

「おはよう」

拭き終わったと同時に、水野君に向かってにっこり微笑んだ。

水野君は一瞬だけ私に目を向けたけど、素知らぬ顔ですぐに視線を外した。

毎日ではないものの、タイミングが合えばこんな風に自分から挨拶をしたりする。けれど、水野君が答えてくれたことは一度もない。

宣言通り誰とも仲良くするつもりはないらしい。ガンコというか、なんというか。自分の言葉を曲げないという信念を持っているようだ。

自分と関わってもつまんないって、本気で思っているのかな。

あの日のあの時の苦しげな水野君の顔が、脳裏に焼き付いて離れない。

「無視することないじゃーん! せっかく人が挨拶してるのにさー! おーい、おはよう」