そして私の隣に立ち、耳元に唇を寄せられる。

ビックリして目を見開く私。ちらりと横目に彼を見ると、前髪で顔が隠れていて、どんな表情をしているかはわからなかった。

ドキドキと心臓が高鳴るのは、こんなに至近距離にいるのと、一瞬だけ鼻をついたシャンプーの香りのせい。

背が高くて肩幅もガッシリしていて、悔しいけれどイケメンだ。お肌もキメが細かくて、とても綺麗。

それにしても、どうして水野君なんかにドキドキしてるの?

黙ってじっと水野君の行動を見守る。さっきまで威勢がよかった私だけど、今は借りてきた猫のように大人しい。

「あ、あの……っ」

耐えられなくて声を出した。

だって黙ったまま突っ立ってるんだもん。

なんなの?

「笑ったり、赤くなったり。夏目って、面白いのな」

低い声でそう囁かれ、さらに心臓の音が大きくなった。

「あ、赤くなんかっ……」

なってないよ。そう否定しようとしたけど、最後まで言葉が続かない。

たしかに顔に熱が帯びているのを実感してしまったからだ。

あー、もう。

なんで水野君なんかに!

ありえないんだからっ。

思いっきり水野君の顔を見上げていた私は、プイと顔を背けた。

「俺は……誰とも仲良くする気はないから」

「え?」