関わりたくないって、苦手だ、ムカつくって思っていたはずなのに、なんだか不思議。
こうやって一度関わると放っておけないんだよね。
そこが私のいいところでもあり、悪いところでもある。
「今思いっきり話題そらしたよな。そういうのも、どうかと思うけど」
「そうやってまたそらしたよね。水野君もどうかと思うよ」
「いやいや、夏目の方がどうかと思う」
シレッとした表情で、からかうような態度。
「いやいやいやいや」
思わず手振りもそえて反論してしまった。
だってまさか、水野君がこんな風に言い返してくるとは思っていなかった。
こんな言い合いができるなんて思ってもみなかった。
本当に人に興味がなくて関わりたくないと思っていたら、そもそも私と話そうとしないはずだ。いつものようにスルーすれば済むはずだもん。
言葉や態度に問題はあるけど聞いたことには答えてくれるし、レスポンスもしっかりしている。
「なんだか誤解してたな。水野君って、クールで一匹狼で無口なイメージだったけど、ちがうんだね」
思わず頬がゆるんだ。
イメージが変わって親近感が湧いたというか、以前のような苦手意識はもうない。
ほんと、私は単純だな。
「夏目が俺のことをどう思おうと勝手だけど——」
そう言ってスッと立ち上がった水野君は、ゆっくり一歩一歩階段を下りて私がいる踊り場までやってきた。