「バカじゃねーの。小学生じゃあるまいし」

水野君はバカにしたように口角を上げて笑った。

「あいにく俺は、夏目みたいにお気楽な考えで学校に来てるわけじゃないから」

「お、お気楽って……」

ひどい言われよう。

まぁ今に始まったことじゃないけどさ。

それよりも……。

「水野君って、私の名前知ってたんだ?」

さっきから何度か名前を呼ばれているような気がする。

「はぁ? 自己紹介の時に言ってただろ」

「え? 私に興味持ってくれてたの?」

「ストーカーだと思ってたからな」

「えー……なにそれ」

「夏目がムービー撮ったりしてたからだろ」

今度はかったるそうに、そう話す水野君。真顔で見つめられて、思わずドキッとした。

吸い込まれそうなほどまっすぐな瞳。奥二重のラインがとても綺麗で、形のいい目をしている。

顔のすべてのパーツのバランスがよくて、おまけに小顔で長身。

アイドルにも、ここまで顔が整った人はなかなかいない。それほど目を引くし、オーラや雰囲気もある。だから、黙ってたってすごく目立つんだ。

「でも、せっかく隣の席なんだから、これからは目が合った時は挨拶くらいしようよ。あ、それと話しかけてくる人にシカトするのもどうかと思う」

ほとんど話したことがないのに、ここまで大それたことを言えてしまうのは私のお節介な性格のせい。

うっとおしがられることはわかってるけど、余計な口を挟まずにはいられない。