「べつに、怒ってないから」
降ってきたのは冷静な声。怒りなんて、まったく含まれていないのがわかる。
「で、でも……さっき、すごく睨んできたよね?」
明らかに怒っているように見えたんだけど。
顔を上げると、水野君と再び目が合った。
相変わらずクールで、何を考えているかわからない淡々とした表情。
水野君って、なんだか掴めない人だな。
「関係ないって思ったのは事実だけど、睨んだのは、もともとそういう目つきなだけだろ」
「えー……」
ただ人相が悪いだけって、それもどうかと思うけど。
「怒ってないなら、いいんだけど。それより、いつも一人で寂しくないの?」
「はぁ?」
「いや、だって。水野君って、いつも一人だし。友達いなくて、よくやってられるなぁって。私なんて、高校生になるのがずっと楽しみで。友達いっぱい作ったり、おしゃれしたり、彼氏作ったり、遊びに行ったり。高校生活を満喫するぞー! って意気込んできたからさ」
入学式の日からかなりワクワクしていたし、新しい場所で新しい生活が始まることがとても楽しみだった。
だけど水野君は初日から楽しみにしている様子もなかったし、新入生にしては冷めてる部類に入っている。
普通はみんな、少なからず楽しみにしているものだよね。



