早く気づけよ、好きだって。



「高校って、なんだか未知の世界だよね! どんな人がいるのかなぁ。気が合う人がいるといいのに。あー、緊張するぅ!」

でも楽しみだな。


思わず頬がゆるんだ。

電車の窓に反射した自分の笑顔が目に入る。

新しい制服はまだ慣れなくて、少しぶかぶか。さらには中学の時とはちがって髪を下ろしているせいか、今の私は前までの私とまったく違って見える。

お母さんゆずりのくっきりした二重まぶたに、スッとした鼻、ちょこんと乗った薄い唇。

いつも見ている自分の顔が、なぜだかとても新鮮に感じる。


それにしても、この制服ほんと可愛いな。

中身はまだまだ子どもっぽい私だけど、いつかこの制服が似合う素敵な女子になりたいと密かに思っていたりする。


スカートは短すぎない膝上丈で裾上げをして、膝下までの黒のソックスと、こげ茶色のローファー。

それだけで、すごく大人っぽくなったように見えるから不思議だ。


「俺はこれから先、桃が遅刻しないかっていうことだけが気がかりだけど」


「だ、大丈夫だよ。心配性だなぁ、蓮は」


「桃が楽観的すぎるんだよ。高校は義務教育とちがって、留年することだってありえるんだからな」


「やめてよー、そんな不吉なこと言うの。まだ初日だよ? 普通はワクワクするもんでしょ」


蓮の言うことはいつも現実的で夢がないんだから。

いつもそう。

蓮って真面目というか、頭が堅いというか。

厳しいんだよね。


「それよりさー、私なにか変わったでしょ?」


蓮の方を振り返り、にっこり笑う。


中学の時と比べて明らかに変わったでしょ、私。

今までパッツンだった前髪を伸ばしてサイドに流し、結んでいた後ろ髪は今日は下ろしている。

美容師をしているお父さんに毎月髪の毛のお手入れをしてもらっているから、自慢じゃないけど髪の毛はツヤツヤのサラサラ。

くせ毛だけど、今日はアイロンで伸ばしてみた。


「はぁ? なんだよ、いきなり」


蓮は意味がわからないというように、怪訝に眉を寄せた。