そりゃ私には関係ないけど、なにもそんな言い方しなくてもいいんじゃない?

だけど私が気に触ることを言ったのは確かで、このままだと後味が悪くなってしまいそう。

「いいの? 追いかけなくて。ここからが始まりだよ? 運命かもしれないじゃん」

皐月が興奮気味に肩を叩いてくる。

始まりって……なにも始まりませんから。

それに、運命って。皐月も意外とロマンチストだったんだ。

「うーん、まぁでも、ちょっと行ってくるね」

「はいはーい! がんばってね!」

皐月の思惑にハマっているなと思いながらも、このまま放っておくのは気が進まないから行くだけだ。

そう、ただそれだけ。

勢いよく教室を飛び出すと、廊下にはたくさんの生徒たちがひしめき合っていた。

今登校してきた人たちや、廊下でたむろする男子や女子のグループ。

窓からは眩しいほどの日射しが差し込んで、見上げる空は憎いほどに青い。

こんな日はいつになく気分が明るくなるのに、なんとなく気が重いのは水野君のせいだ。

キョロキョロしながらその後ろ姿を探すと、ちょうど階段へ続く廊下を曲がったのが見えた。

歩くのが早いのかと思いきや、その足取りにはさっきまでの鋭さが消えているように思える。