押したらすぐに折れてしまいそうなほど細くて、素朴で儚い印象を受ける。
ふーん、水野君ってこんな子がタイプなんだ。
人に興味がなさそうだから、恋愛にも興味がないと思っていた。
しかもめちゃくちゃお似合いだし。
「ほんと、ありがとう……」
ズズッと鼻をすする音がした。
え?
思わずじっと凝視してしまう。
女の子は「ごめんね、こんなんで」と言いながら、涙を拭っている。
唇がワナワナと震えていた。
泣いてる?
映画に付き合ってくれたことが、泣くほど嬉しかったってこと……?
だけど嬉し泣きというよりも、悲しくて泣いているような雰囲気だ。
「泣くなよ。どうしていいかわからなくなるだろ」
ぶっきらぼうな言葉だけど、その声にはどことなく優しさが含まれているような気がする。
私と話すときとは大違いだ。
「う、うん、ごめんね……っ」
「相変わらず泣き虫だな、瑠夏(るか)は。ま、俺がそうさせてんのか……」
「そんなこと、ないよ……悪いのは、勝手なことを思ってる私だもん。もう、ほんとに続けるつもりはないの? 春ちゃんは、それでいいの?」
「…………」
黙り込む水野君。
なにも映画の最中にそんな話をしなくても。
けれど、それ以降水野君はだんまりで、なにも言おうとはしなかった。
女の子から目をそらすように、不意に水野君が顔を上げた。
その瞬間思いっきり目が合ってドキリとする。
透き通った綺麗な瞳。
や、やばい。
見てたのがバレちゃった。
水野君は驚いたように目を見開き、そしてそれはだんだんと鋭い目つきに変わっていった。
〝なんでお前がここにいるんだよ〟
そう言われているのがわかって、内心ますます焦ったけれど。
これは単なる偶然で不可抗力的なもの。
そんなに責められても困るんだけど……。