「じゃあな」
私が離れようとしたのを察してくれたのか、水野君は私より一足早くスタスタと去って行った。
一八〇センチはありそうな後ろ姿。オーラがあってひときわ目立つ水野君が歩くたびに、周りの女子高生たちが振り返って見ている。
悔しいけど、モテ要素を兼ね備えたイケメンなのは認めざるを得ない。
あれ?
そういえば、水野君も映画を観るのかな。
ここにいるってことは、きっとそうなんだよね?
ポップコーンを持ってるし、いかにも〝今から観ます〟といった感じだ。
でもまぁさすがに恋愛映画は観ないでしょ。
水野君は誰かを探しているのか、キョロキョロと辺りを気にしているように見える。
気になったけど時間が迫っていたので、とりあえずトイレを済ませることに。
トイレから出て一応水野君の姿を探したけど見当たらず、どうやらすでに中に入ったようだった。
私も受付のスタッフにチケットを渡してスクリーンがある部屋の中へと入る。
最終日だからなのか、わりと小さめの部屋でこじんまりとしている。観客もポツポツとまばらに埋まっているだけで、公開数日の御礼満員がウソみたいに思えた。
それでもやっぱりお客さんはカップルばかりで、一人できている自分が少しだけ惨めに思える。でも、それでもいいんだ。
映画を観る時、私はいつも一番後ろのど真ん中と決めている。ど真ん中が埋まっていたら、その両隣と広げていき、首を動かさずに全体を見渡せる場所がお気に入り。
今日はど真ん中とその左隣が埋まっていたので、ど真ん中からひとつ空けた右隣の席を選んだ。
薄暗い部屋の中を指定の場所目指して歩く。
座席のそばまで来た時、ど真ん中の席に座っていた女子高生の姿が目に入った。
どこの学校かはわからないけど、グレーの清楚なワンピースタイプの制服を着ている。
胸元にはエンジ色のリボンがつけられていて、お嬢様っぽい制服だった。



