早く気づけよ、好きだって。


でも後悔はない。言いたいことが言えて、むしろスッキリしているくらいだ。

ここまで言った自分を褒めてあげたい。

「ぷっ」

え?

笑った……?

まさか、あの水野君が?

「タイプなんて聞いてねーし。はは、面白っ」

信じられないことに、水野君が目を細めて笑っている。

うそでしょ、今までの冷たい態度が一瞬にして覆るくらい満面の笑みを浮かべている。

こんな顔で笑うんだ……?

水野君は私の視線に気づくと、バツが悪そうにプイとそっぽを向いた。

そしてコホンと咳払いをひとつする。

「悪かったな、俺の勘違いで」

「え?」

今、謝った……?

小声で聞き取りにくかったけど、たしかに謝罪の言葉に聞こえた。

「信じられない」

どういう風の吹きまわし?

だって、あの水野君だよ?

笑った上にあっさり謝罪するなんて、予想外過ぎて拍子抜けしてしまう。

「どういう意味だよ、それ」

ジロリと睨まれ、ギクリとする。

「あ、いや。えっと! 水野君が謝るとは思ってなくて」

「悪いと思ったら謝るだろ。つーか、謝れって言ったのはそっちだしな」

「まぁ、そうなんだけど……」

彼への怒りはどこへやら。

あっさり謝ってくれたことにビックリして、一瞬でそんなことは吹き飛んだ。

「謝ったら謝ったで、そんな反応をされるとはな」

「……っ」

だって、仕方ないじゃん。私の中で本当に意外だったんだから。

とは言えず、そうこうしている間に館内にアナウンスが流れた。どうやら私が観たかった映画の案内が始まったようだ。

少女漫画を脚本にした高校生が主人公のベタな恋愛映画。『あの時、たしかに好きだった』っていうタイトルは、聞いただけでもちょっと恥ずかしく思える。

でも、それでも観たいんだ。

これ以上ここにとどまっておく理由も見当たらず、戸惑いながらもこの場を離れようとする。

「あ、あの、じゃあね。映画が始まるから。謝ってくれて、ありがとう」

私がお礼を言うのもおかしいけど、早くこの場を離れたかった。