どうやら行きたい大学があるらしく、勉強に専念したいらしい。
その証拠に平日は週四で塾に通っている。
私には無理、到底及ばない。
毎日毎日、放課後までそんなに勉強なんかできないよ。だけど蓮は文句も言わずに、ただ前だけを見て目標に向かってひたすら頑張っている。
蓮ならもっと上の高校も狙えたのに、どうしてレベルを下げたのかは今でもわからない。
理由を聞いてもはぐらかされてばっかりで、教えてくれないんだ。
夕方の時間帯の電車は帰宅ラッシュにはまだ早く、余裕で座席に座ることができた。
蓮は今日も塾らしく、隣で参考書を広げながら小難しい表情を浮かべている。
こんな時は話しかけても適当な返事しかしてくれないので、私は邪魔をしないように大人しくスマホを触っていた。
友達がSNSに投稿したものを順番に流しながら読んでいく。
高校で新しくできた友達と遊びに行ったり、新生活のことを投稿している友達がほとんど。
みんなとても楽しそうで、たくさんの笑顔がそこにはあった。
そしてある一つの投稿に目が止まる。
「あ、そういえば……!」
思わず大きな声を出してしまった。
「なんだよ、急に」
蓮が参考書から視線を外し、何事かと私を見る。
「ごめん。観たかった映画、今日までだったなぁと思って」
友達の#映画に行ったよ#明日が最終日というハッシュタグを見て思い出した。
本当は春休みの間に観に行きたかったけど、なかなか時間が取れなくて結局行けなかったんだ。
『間もなく到着します。お出口は右側です』
アナウンスの声が響いて、それがまたちょうど映画館がある駅だった。
「ごめん、蓮。私、映画観てから帰るね!」
「え? は? おい」
「ごめーん! また明日!」
困惑する蓮を車内に残して、私は電車を飛び降りた。



