「そ、そんなの、ただの強がりでしょ……?」
涙が止まらなくて、浴衣の袖で目元を拭う。せっかくメイクもしてきたのに、これじゃ台無しだよ。
「瑠夏には中一の秋に振られてる。正直、忘れるのに苦労したけど、今はマジでなんとも思ってない。思ってたら、夏目にキスするわけないだろ」
え?
「毎日毎日、夏目から連絡がくることを期待してた。サッカーしてる時は別だけど、授業中とか……ふとおまえのことが頭に浮かんだりして。この俺が、ガラにもなく夏目に会えなくてさみしいとか……思ったりしてたんだぞ」
「ウソ……」
だって……水野君がさみしいなんて。そんなキャラじゃないじゃん。
よっぽど恥ずかしかったのか、それを隠すように水野君は手でクシャッと自分の髪を握った。
こんなに動揺している水野君を見るのは初めてかもしれない。
「ウソじゃねーよ。あの時から……夏目に初めて好きって言われた時から、俺はおかしくなったんだよ。最初は苦手な奴だと思ってたけど、おせっかいで、無鉄砲で、無茶ばっかする夏目のことがいつのまにか気になって……目で追ったり。幼なじみの須藤と仲良くしてるところを見てイライラしたり……」
初めて聞かされる本音に、恥ずかしさでどうにかなってしまいそう。頭がクラクラしてめまいがする。
「好きなものを好きだって、今なら胸を張って言える」
その瞬間、水野君の手が私の手に重なった。
「俺は夏目が好きだ」
私の目から涙がこぼれ落ちた。胸の奥のほうがキュンと疼く。
「長いこと待たせて悪かったな。あの時の俺はすべてが中途半端ですっげーカッコ悪かったから、素直に好きだって言えなかった。ようやくちょっと前進した今、どうしても夏目に気持ちを伝えたくなって帰ってきたんだ」
ここまで自分の気持ちを素直に話してくれるなんて思わなかった。
水野君のまっすぐな気持ちが伝わって、胸が熱くなった。
「夏目」
「……ん?」
「ごめんな」
「なんで、謝るの? 嬉しいよ、水野君が正直に話してくれて。それにね、わ、私も……水野君のことが好き」
涙目で下から水野君の顔を見上げる。
「やめろよ、そんな目で見るの」
「な、なんで? へんな顔してる?」
プイと顔をそらした水野君を見て不安になる。よっぽどへんな顔だったのかな。
「かわいいっつってんだよ、バーカ」
「……っ」
水野君に甘い言葉はダメだよ。ギャップがありすぎて、ドキドキが止まらない。
きみに恋してよかったと、今なら私も胸を張って言える。
たくさん遠回りをしたけど、きっとこれでよかったんだ。
苦しいこと、ツラいこと、逃げ出したくなること、悲しいこと。これから先もたくさん待ち受けていると思う。
でも、私はいつでもどんな時でもきみの隣にいたい。
できればきみが——
夢を叶えたそのあとも。
ずっとずっと、きみの隣で笑っていたい。
*きみに恋したその日から。*
完結
2019.03.21



