それなのにうまく話せなくて、だんまりを決めこむ私。
「夏目、顔上げて」
そんな私に水野君の優しい声が降ってくる。ゆっくり顔を上げると、すぐ目の前まで水野君の顔が迫っていた。熱を帯びたような力強い瞳。どんどん距離を詰められて、息をするのを忘れる。
「んっ」
唇が触れたのは、ほんの一瞬のことだった。
ビックリして目を見開いたまま固まる私と、照れくさそうに頬をかく水野君。
「な、なん、で……今」
キ、キス……した?
私の頭は完全にキャパを超えていた。真っ白になってなにも考えられない。
「わり」
「……んで、謝るの……っ? 謝るくらいなら、しないでよっ」
もうわけがわからないよ。なんでそんなことするの?
水野君がわからない。
「私ばっかり、苦しくて……私だけが、水野君を好きで……水野君は、瑠夏ちゃんが好きなのに、どうして、キスとか……っ。うーっ、ひっく。水野君の……バカァ」
言ってるうちに悲しくなって涙が出てきた。
「私に、こんなことする前に……瑠夏ちゃんに、言わなきゃいけないことがあるでしょ……っ?」
こんなことを言うつもりじゃなかったのに、水野君がキスなんかするから。
「は? 俺、前に言わなかったっけ? 瑠夏のことはなんとも思ってないって」



