早く気づけよ、好きだって。


「ふーんって……ちょっとは興味を示そうよ」

「そう言われてもなぁ」

シレッと返すと皐月は苦笑いを浮かべた。

「冷たいなぁ。ちょっとは気にならない? 水野君ってクラスでは浮いてるっていうか、異質だし。カリスマ性を持ってるけど、なにか闇を抱えてそうじゃない?」

「っていうか、皐月は彼氏がいるんだから、他の男子のことなんて気にしたら、彼氏が怒るんじゃないの?」

質問されたことはスルーして、今度は私が責める番。

「やだぁ、そんな意味で気にしてるんじゃないから。それに、私たちはラブラブだから大丈夫だよ!」

頬を真っ赤にして皐月は満面の笑みを浮かべる。

彼氏のことが大好きだということが、その笑顔からひしひしと伝わった。

「そういえば、昨日電話で彼氏がね——」

それからは水野君のことなんて忘れて、皐月はノロケ話で盛り上がった。

付き合いたての彼氏はスポーツに特化した高校で、しかも寮生活をしているから、なかなか会えないんだとか。

でも毎日電話やメッセージのやり取りをしてるから、寂しくないと言っていた。

いつか私も、皐月みたいに彼氏ができたりするのかな。

今まで恋愛なんて興味がなかったけど、高校生になったわけだし、彼氏がほしくないわけじゃない。

いつか誰かを好きになったら、私も皐月みたいに可愛くなれるのかな。

「ごめんね、お待たせ!」

「俺も今きたところ」

蓮が右手で眼鏡の位置を整えながら、フッと唇をゆるめた。それはいつもの蓮の仕草で、見慣れているせいなのかとても安心させられる。

どちらからともなく歩き出し、校門を出て駅へと向かう。

時には百合菜も一緒で、部活がない日は三人で帰ることもあった。

ちなみに百合菜は茶道部に入っている。

蓮は中学の時は柔道部に入っていたけど、高校では特に続けるつもりはないらしく、私と同じ帰宅部だ。