うんと頷くと水野君は「座って待ってろ」と言い残し、駅の自販機に向かって歩き出した。遠目からそれを見ていた私は、とりあえず空いていた椅子に座って待つことにした。
時々吹く風がすごく冷たい。
みんなで集まるからとオシャレしてスカートを履いたけど、こんなに寒いならもうちょっと暖かい格好で来ればよかった。
急いで家を出たからマフラーと手袋も忘れちゃった。もうすっかり冬だなぁ。
両手をこすり合せながら、そんなことをしみじみ実感する。
「ほら」
ピトッと頬になにかが当たった。それと同時にジンと熱を感じる。
「わ、なに?」
とっさに上を向く。するとそこには、ペットボトルのミルクティーが。どうやら、水野君が自販機で買ってきたものらしい。
「やる」
「わー、ありがとう」
ペットボトルを受け取り、早速手を温める。まるでそこに火が灯ったみたいに、じわじわと温もりが広がっていく。
それを頬に当てたりして体を温めていると、次にフワッとした感触が首筋にきた。
その正体は、さっきまで水野君がしていた黒いマフラー。
「え? え?」
「くそ寒いのに信じらんねーよ、その薄着」
まさかの行動に戸惑う私を、呆れたように見つめてくる。



