「蒼……俺……っ」

水野君は一歩ずつゆっくり蒼君のそばへと寄っていく。その表情は、とても険しくて。うっすら涙が浮かんでいるようにも見える。

「なにも、言うな……おまえは、悪く、ない」

蒼君の声はとても穏やかで優しくて。

「なん、で、なんでだよ、俺はおまえに最低なことを……」

水野君の声はかすれていた。ひどく後悔しているということが伝わってくる。

「俺が、おまえだったら……同じこと、言ったと、思う。だから、気にするなよ」

「ごめん……マジで、ごめん」

蒼君は許しているというのに、水野君は納得がいかないようで。何度も何度も謝罪の言葉を述べていた。

「ごめん、な……っ」

涙声の水野君は、ズズッと鼻をすすりながら蒼君に頭を下げている。瑠夏ちゃんは頬に流れた涙をそっと拭って、二人の間に立った。

「はい、もうおしまい。これで仲直りね」

瑠夏ちゃんは水野君の手を掴んで蒼君の手と握らせた。堅い握手を交わす二人。

私はじわじわ胸が熱くなるのを感じながら、そんな二人の姿を見つめていた。