早く気づけよ、好きだって。


思い出したら、だんだんと腹が立ってきた。

どれだけ自分のルックスに自信があるのか知らないけど、初対面であれはないんじゃないかな。

チラリと隣を見ると、水野君はイヤホンで音楽を聴きながら机に突っ伏していた。

数日前、水野君と仲良くなろうとした男子が彼に話しかけても、無表情に「ああ」とか「うん」とか返事をするだけで会話が広がらない場面に遭遇した。

というよりも、隣の席だから嫌でもそこに居合わせただけなんだけど。

必死に歩み寄ろうとしている男子に、話しかけるなという空気を前面に押し出して、最後にはスルーを決め込んで反応しない始末。

それを見て、私はよっぽど性格が悪いんだと思った。

だって、普通ならそんな対応しないでしょ。

友達がほしくないのか、水野君は常に一人でいる。

人と馴れ合おうとしない彼に、男子は構うことをしなくなり、女子もまた遠目から見ているだけ。

今ではもうそんな光景が当たり前になりつつある。

「噂で聞いたんだけど、水野君ってサッカーがうまいらしいよ。なんでも、クラブユースの選手だったとか。でも、問題を起こしてやめちゃったんだって」

「問題? どんな?」

「うーん、私も聞いた話だから信憑性に欠けるんだけど」

そんな前置きをしたあと、皐月はさらに声を潜めて話し出した。

「噂ではチームで仲が良かった友達と大喧嘩したんだとか。聞いた話だから、ほんとのことなのかはわからないんだけど」

「……ふーん」

そうなんだ?

サッカーしてたんだ。まぁ、たしかに体格がいいし、スポーツをしてそうな筋肉のつき方をしているもんね。