「わ、私……瑠夏ちゃんから電話をもらった時、瑠夏ちゃんが泣いてたから、危ないんじゃないかって……」
「え? あ、ごめんねっ。紛らわしくて! 蒼君が目を覚ましたって伝えたかったんだけど、声にならなかったの」
「な、なんだ……私が……勝手に勘違いしてただけだったんだ」
蒼君が目を覚ましたってことは、もう大丈夫なんだよね?
「よ、よかった……ほんとに、よかった……っ」
ホッとしたら一気に力が抜けて、ヘナヘナと足からその場に崩れ落ちた。
「も、桃ちゃん? 大丈夫?」
「あ……うん。ごめんね、力が入らないや……」
全速力でここまできて、緊張の糸がプツンと切れたんだ。しばらく動けそうにない。
「な、んだよっ、心配させやがって……っ」
水野君のか細い声がした。
「しゅ、ん……? きて、くれたのか?」
ベッドに横たわる蒼君が必死に声を振り絞る。そして、水野君に向かって布団の中から手を差し伸べた。
私の位置から蒼君の顔は見えない。でも、必死に水野君に向かう蒼君の手は見える。その手はどこか遠慮がちだけど、まるで水野君がくるのを待ちわびていたかのようだった。
きっと、待っていたんだよね。