「わ」

すごい力で引っ張られたかと思うと、上半身がフワッと宙に浮いた。そして、その勢いのまま立ち上がらされる。

昨日は暗かったけど、明るい太陽の下で見る水野君はキラキラとまぶしく輝いて見える。

引き締まった身体にスポーツウェアがよく似合って、すごくカッコいい。

「もうちょい地面を蹴る感じで蹴ってみろよ。そしたら、うまくいくだろ」

「ほんと? あの右上を狙える?」

「ボールをコントロールするのは、この数日では無理だな。まぁでも、絶対にそこに蹴るんだ! っていう強い想いがあれば、まぐれで決まることもあるから諦めんなよ」

水野君は真剣に私に教えてくれた。そこにツラそうな顔はない。心からサッカーが好きなんだとわかるくらい、いい表情をしている。

水野君にとって、きっとこれが小さな一歩になった。そう信じて、私は練習に臨んだ。

「え、ちゃんと五時にきてたの? だったら、なんで声をかけてくれなかったの?」

「仕方ないだろ。夏目が真剣にやってんのを見てたら、いつのまにか時間が経ってたんだよ」

「え? ずっとって、二時間も見てたの……?」

目をパチクリさせる私。水野君は唇をムッと尖らせて、プイとそっぽを向いた。

その仕草はまるで子どもみたいで、なんだかかわいい。