夜空には満月が浮かんでいて、アスファルトの上に二人のシルエットが映し出された。改めて見ると、恥ずかしくてたまらない。
「俺のせいで誰かが傷つくのは……もう嫌だ。もう、誰も傷つけたくない。だから……こんな無茶はもう絶対に……二度とするな」
「私も水野君と一緒だよ、体が勝手に動いてたの」
「マジで、バカだな。おまえは」
何回ぐらいバカって言われたかな。わからないけど、水野君にそう言われるのは嫌じゃない。
そんな私は、どこかおかしいのかもしれない。
「ねぇ、水野君……」
私は水野君の胸に顔を埋めながら問いかける。
「サッカーが好き?」
「…………」
水野君は否定も肯定もしなかった。私の前から逃げることも、怒ることも、なにも。
「もし、もしも、水野君がまだ今でもサッカーが好きなら、明日からも私にサッカーを教えてよ。朝、五時に総合公園で待ってるから」
「…………」
水野君は否定も肯定もしなかった。ただ黙ったまま息を潜めて、なにかを考えているようだった。