「夏目が蹴られそうになった時、体が勝手に動いておまえをかばってた。頭に血がのぼって、カーッとして……正直、今でもあいつらにムカついてる」

「だ、大丈夫だよ、無事だったわけだしさ! それより、水野君は? ほんとに大丈夫なの? 足、たくさん蹴られてたよね?」

「俺はなんともねーよ。それより、自分の心配をしろよ。おまえが怪我でもしてたら、俺は……っ」

水野君の体が震えている。私はとっさにその手を掴んだ。そして、ギュッと握る。

「大丈夫だよ。私は大丈夫。それよりも、私は水野君の足が心配なの。サッカーをやるための、大事な足だもん……大切にしなきゃ。無事でよかった……ほんとに」

「はぁ……なんで、俺のことばっか」

水野君の腕が伸びてきて、あっという間に肩にまわされる。再びおでこが水野君の胸にあたって、ビックリした私は固まったまま動けない。

すぐそばで感じる体温と息遣い。

「み、ずの、君?」

トクントクンと自分の心臓の音がうるさい。

キャパを超える出来事が起こっているせいで、頭の中が真っ白になった。

だ、抱きしめ、られてる?

ようやく頭がまわり出した頃、そう認識することができた。