「本気でそう思ってるなら、ちゃんと桃と向き合ってあげて。私は帰るから、また学校でね。あ、ちゃんと送ってあげてよね!」
「え、でも。皐月は?」
さっきの男たちがまだその辺をうろついているかもしれない。皐月は顔を見られてはいないだろうけど、こんなことがあった後だから心配になる。
「大丈夫だよ、いざとなったらアプリがあるから!」
「で、でも」
「大丈夫だって。それより、ちゃんと話し合うんだよ? わかった? バイバイ!」
もしかしたら気をつかってくれたのかな。それでもやっぱり心配だから、あとで電話してみよう。
「はぁ」
皐月の背中が見えなくなると、盛大なため息が隣から聞こえた。未だに足に力が入らなくて、座りこんだままの私。
私の隣に、水野君も力なく座りこんだ。そして私の肩にトンッとおでこを乗せて、うつむく。
「み、水野君……? どこか痛いの?」
具合いでも悪いんじゃないかって心配になる。
「マジで情けねーな……俺は」
「え?」
「カッコ悪すぎるだろ……マジで、なにやってんだ」
「水野君……?」
「夏目が俺の足をかばって蹴られようとしてるのを見た時……」
かすれた声で話し出す水野君。
水野君は今、どんな顔をしているんだろう。
「なにやってんだって……すっげー恥ずかしかった。夏目にここまでさせて……なにやってんだろうな、俺は」
とても儚げで、弱々しくて、今にも消えてしまいそうなほどの声。