「桃! 大丈夫!?」
皐月が駆け寄ってきた。
水野君の体がゆっくり私から離れる。足に力が入らなくて、立ち上がることができない。
皐月はよっぽど全力で走ってきたのか、いつもかわいくしている髪の毛が乱れている。
膝に手をつきながら、はぁはぁと苦しそうに息を切らす皐月。
「心配、したんだからね」
「ご、ごめん……助けを呼んでくれてありがとう。おかげで助かったよ」
だけど、でも、あれれ?
一向におまわりさんがやってくる気配はない。たしかに声がしたと思ったのに。
「ああ、あれね。アプリだよ、アプリ! 交番を探している最中に、防犯アプリの存在を思い出したの。で、使ってみたってわけ」
アプリ……?
「おまわりさんの声、リアルだったでしょ? セリフのパターンがたくさんあって、その場に応じた内容を選ぶことができるの。パトカーのサイレンの音とかもあるんだよ」
「へえ、すごいね……」
そんなアプリがあるんだ。
「このアプリ、使うことないなって思ってたけど役に立ってよかったよ」
皐月は未だに心配そうな顔を浮かべている。皐月のおかげで助かった。
「ちょっと水野君! 桃になにかあったら、一生許さなかったところだよ! なんでこんなことになったのかはわからないけど、もう少し考えて行動してよね!」



