代わりにすぐそばで水野君が痛そうに顔を歪めた。私の体はすっぽり水野君に覆われていて、さらには後頭部を掴まれ引き寄せられた。胸に顔を埋める形になる。
「み、水野君……っなんで」
苦しいやら、恥ずかしいやら、怖いやら。でも、水野君の腕の中はとても温かい。
「うっせー、黙れ。べつに俺なんか、どうなってもよかったのに……」
力強くギュッと私を抱きしめるその腕が、小さく震えている。
「水野君……」
「女の前だからって、気取ってんじゃねーよ!」
「カッコつけてるわりには、震えてるけどな」
「はは、カッコわりー」
「うっせーな、さっきからごちゃごちゃ言いやがって」
今までに聞いたことがないほどの低い声。水野君からものすごく殺気立ったオーラが放たれ、そばで聞いていた私も思わず震え上がりそうになった。
本気で怒っているってことなのかな。だとしたら、今までの水野君とは全然比べものにならない。今までは本気じゃなかったんだ……。
「おまわりさん、こっちです! こっち!」
その時、遠くから声がした。
「あそこですっ! 人が倒れてる!」
「こらー、おまえら! そこでなにやってる!」
女の人と大人の男の人の声。そのどちらも、聞いたことのない声だった。
誰かが、助けを呼んでくれた……?
「うっわ、やべっ!」
「ちっ」
「おい、行くぞ!」
男たちはあっという間に私たちの前から走り去った。



