その日、お昼休みが終わっても水野君は教室に戻ってこなかった。カバンはあるから、まだ校内にいるとは思う。
「目赤いよ? 大丈夫?」
心配そうに私の顔をのぞき込む皐月。私は顔を見られないように下を向いた。
「うん、大丈夫……」
「全然そんな風に聞こえないからっ! よしっ、今日はパーッと行こ、パーッと!」
「パーッと? どこ行くの?」
「そりゃあ、もちろん——!」
なかば強引に皐月に連れて行かれたのは、高校の最寄り駅近くのカラオケ店だった。
皐月はマイク片手にノリノリでタンバリンを鳴らしながら、今流行りのアイドルグループの曲を熱唱している。
楽しそうだなぁ。
そんなことをぼんやり思いながら、頭にあるのは水野君のこと。あれから、ちゃんと教室に戻ってきたのかな。
って、ダメダメ。もうやめる。関わらないって決めたんだ。
いくら考えないようにしてみても、頭の片隅にちらつく水野君の顔。
こんなにも気になって仕方がないのは——どうして?
水野君のことを想うと、胸が締めつけられて苦しくなる。
どれだけ嫌がられても、ごめんなさい。
私はまだ——
水野君のことがすごく好きみたい。



