おばあちゃんの病室を出たあと、向かいの病棟へ寄ってみた。窓からは西陽がさしこんで、辺りはオレンジ色に染まっている。

私は一番奥の個室の前で足を止めた。

そこは蒼君の病室。中からは人の気配がしなくて、ピッピッという規則正しい機械の音だけが聞こえてくる。

蒼君がこのまま目を覚まさなかったら、どうなるんだろう。

水野君も瑠夏ちゃんも、苦しみから解放されないままなのかな。

ねぇ……蒼君。

私たち、おせっかいなところが似ているらしいよ。似た者同士の私たちは、きっと考えかたもすごく似ているんだと思う。

水野君の親友であり、瑠夏ちゃんの好きな人でもある蒼君。私もきみと仲良くなってみたい。

だからお願い……目を覚まして。

このままでいるのはよくないって、蒼君もわかってるでしょ?

水野君と瑠夏ちゃんのためにも、早く目を覚ましてよ。

じゃなきゃみんなが、ずっと苦しいままだよ。

水野君が苦しいと私も苦しい。水野君にも瑠夏ちゃんにも、笑っていてほしいんだよ。

だからお願い……蒼君も現実から目を背けないで。

目を覚ましてください。水野君の笑顔を取り戻せるのは、きっときみしかいないから。