次の日も、その次の日も、水野君の態度は変わらなかった。
話しかけても徹底的に無視されるし、最近では教室にいることが少なくなった。きっともう、私とは関わりたくないんだ。
水野君の心の傷は、私が考えているよりも深くて重い。
瑠夏ちゃんは私なら水野君を変えられるって言ってくれたけど……無理だよ。
放課後、私はまたおばあちゃんの病室にいた。打つ手がなくなってどうすればいいかわからなくなった時、頭におばあちゃんの顔が浮かんだ。
そしたら急におばあちゃんに会いたくなって、お見舞いにきたってわけ。
「なにかあったのかい?」
「え?」
「悩みがあるような顔をしているからね」
おばあちゃんが優しく私に笑いかける。骨折してから、今もずっと入院生活を続けているおばあちゃん。
「学校にね、好きな男の子がいるの。その人は今、とても苦しんでいて。私、見てられなくなって……余計なことを言っちゃったの。そしたら、嫌われちゃったんだ。私が言ったことは、まちがっていたのかな……?」
そんなこと、おばあちゃんに聞いたってわかるわけがないのに。でも、誰かに言いたかった。聞いてほしかった。
「よかれと思って言ったんだろう? じゃあ、桃ちゃんがしたことは、正しかったんだよ。たとえまちがっていたとしても、謝れば済むことだ。それができるのが、ばぁちゃんの自慢の優しい桃ちゃんだ」
「おばあ、ちゃん……」
「動物とちがって、人間は話し合うことができる生き物だ。相手のためを思って言ったことは、必ず心に届いているばずだよ」
「そう、かな?」
水野君の心に、私の言葉は届いてる?
「桃ちゃんはまっすぐな子だからね。そのまっすぐさが、相手にも必ず伝わっているよ」
おばあちゃん……。
なんでいつも、私がほしい言葉をくれるの。おばあちゃんの優しい言葉が胸に温もりを与えてくれる。
やっぱりおばあちゃんはすごいや。
「おばあちゃん、ありがとう。私、がんばるね」
「ああ、桃ちゃんなら大丈夫。絶対に大丈夫だからね」
おばあちゃんと話して元気が出た。
私の声はきっと水野君の心に届いているはず。
私がしたことは、まちがってなかったんだよね。
だったら、後悔する必要なんてない。私は私のやるべきことをやったんだ。
たとえ、嫌われようとも。