でも、昨日の水野君の涙は紛れもなく本物だった。あの言葉だって、きっとウソじゃない。水野君は今でも苦しんでいるんだ。
だって、ボールを蹴りながら泣きそうな顔をしている。今の水野君にとって、サッカーはツラいものでしかないのかな。
好きなものがツラいものに変わるなんて、私には耐えられない。
「夏目って、よくあいつんちに出入りしてんの?」
水野君は、リフティングをしながら器用に私に視線を向けてくる。
「あいつんちって、蓮のこと? 小学生の時は毎日のように家に行ってたけど、最近は全然だよ。塾で忙しいみたいだし」
「ふーん」
「なに?」
なんなの?
なぜかちょっと不機嫌そうなんだけど。
「べつに……なんでもねーよ」
プイと顔をそらされた。なんだかよくわからなくて、ちょっとモヤモヤ。
「ねぇ、水野君……!」
「なんだよ?」
「サッカーが……好き?」
「はぁ? なんだよ、いきなり」
「いいから、答えて!」
「好きとか嫌いとか……そんなレベルじゃねーんだよ」
よくわからない答えだけど、肯定の意味として捉えていいのかな。
軽く二十分は経っているけど、リフティングはまだ続いている。
「じゃあ、瑠夏ちゃんのことは……好き?」