夏目 梅、それがおばあちゃんの名前。ナースステーションでお見舞いにきたことを伝えると、看護師さんがおばあちゃんの元まで案内してくれた。
「おばあちゃん」
おばあちゃんは日当たりの良い窓際のベッドに座って、新聞を読んでいた。老眼鏡をかけたおばあちゃんは、新聞から目を離してこっちを向く。
「おや、桃ちゃんかい」
おばあちゃんは目尻にシワを寄せて優しく笑った。
「うん、お見舞いにきたよー。それと洗濯物取りにきた」
おばあちゃんと久しぶりの再会。前に会ったのは、夏休みだったっけ。入院して病衣を着ているからなのか、前に会った時よりも小さくなっているような気がする。
「そうかい、ありがとね。おまんじゅうがあるけど、食べるかい? それとね、お隣の佐藤さんが梨をくれたんだよ。むいてあげようね」
優しい笑顔でニコニコと接してくれるおばあちゃん。一日中ベッドの上にいるせいかとても退屈らしく、どうやら私がきたのが嬉しいらしい。
仕事が忙しい両親に代わって、小さい頃はよくおばあちゃんが私の面倒を見てくれた。だからなのかな。おばあちゃんの笑顔を見ていると、とても落ち着くんだ。
「骨折したところ、痛い? 大丈夫?」
「桃ちゃんがきてくれたから、痛みなんてどこかに吹っ飛んだよ」
「それなら、毎日来ようかな。おばあちゃん、早く元気になってね」
「ありがとね、桃ちゃん。小さい頃から、優しいところは変わらないね」