麻衣ちゃんは少しずつ私に心を開いてくれているって解釈してもいいのかな。
「でも、もう周りに合わせるのはやめる。今度は私が桃ちゃんを全力で守れるくらい、強くなってみせる」
力こぶを作りながら、なんとも頼もしいことを言ってくれる麻衣ちゃんのその笑顔は、最高にかわいい。
今日麻衣ちゃんに会ったのは偶然だけど、運命だったのかな。ちゃんと話せて、誤解がとけてよかった。また仲良くできるのがたまらなく嬉しい。
「お祭りの日ね、私、皐月や同じクラスの女子と一緒にいたの。それで皐月も桃ちゃんと須藤君のことを見て……誤解したんだと思う。きっと、桃ちゃんが須藤君のことを話してくれなかったのがショックだったんじゃないかな」
「え? あ、そういえば……」
皐月も前に私のことを信じられないって……そう言ってたっけ。なんのことだかわからなかったけど、そういうことだったの?
私と蓮が付き合ってるって思ってたんだ?
そして、それを話してくれないことがショックだったの?
「皐月や同じクラスの友達に、須藤君のことが好きだって打ち明けたあとのお祭りだったの。だから、みんなが桃ちゃんのことを敵対視しちゃったんだ。でも、皐月はちがうと思う」
「…………」
全然知らなかった。あのときは水野君のことでいっぱいで、ほかのことを考えている余裕なんてなかったから。
「私、もう一回皐月と話してみる」
「うん、桃ちゃんならそう言うと思った。私も見習わなきゃね、桃ちゃんのこと。そんな風にまっすぐぶつかれるところ、わりと本気で尊敬しちゃう」
「そ、そんなことないよ。直情型なだけだよ」
「あはは、だね。デッキブラシとおんぶにはウケたなぁ」
いつのまにか麻衣ちゃんから涙は消えていた。そして、私も自然と笑顔になる。
「もう、それは言わないでー! 忘れてくださーい!」
「忘れないよ、嬉しかったんだから」
麻衣ちゃんがクスッと笑った。私はなんだか照れくさくなって、なにも言い返せなかった。
ふと見上げた先には綺麗な満月が見えて、しばらくの間二人でそれを見ていた。