早く気づけよ、好きだって。


直角になって頭を下げた。本来なら土下座でもしなきゃいけないレベル。

「いーのいーの、桃ちゃんはなにも悪くないから。強引に連れ戻そうとしたお兄ちゃんが悪いんだよ」

「いやいや、元はといえば麻衣が家出なんかするからだろ。マジで痛かったんだからな、デッキブラシ」

恐る恐る顔を上げると、お兄さんにジロリと睨まれてしまった。よく見ると二人はそっくりで、お兄さんもかなりのイケメンだ。

「ご、ごめんなさいっ!」

「桃ちゃん、ほんとに気にしないで。それより、お兄ちゃんなんか放っておいてあっち行こっ」

麻衣ちゃんはお兄さんに背を向けて歩き出す。それをオロオロしながら見つめる私。ど、どうしよう。

「おまえなぁ、待てよ」

「うるさい、お兄ちゃんのバカ。私は桃ちゃんに大事な話があるの。邪魔しないでよ」

「相変わらず生意気な奴だな。話が終わったら、ちゃんと帰ってこいよ!」

「はいはい」

スタスタと歩いて行く麻衣ちゃんの背中が遠ざかる。私はどうすればいいのかわからずに、呆然と立ち尽くす。

話って、なんだろう。

なにを言われるのかな。

「あいつ、実はすっげー不器用なんだよ。周りに話を合わせたり、気を遣ってばっかなところもあったりしてさ。素直じゃないし、ムカつくところもあると思うけど、今後も麻衣と仲良くしてやって」