「なんだよ、おまえ。いきなりなにすんだよ!」
「うるさい! 早くその子から離れろ、この変態野郎!」
「ちょ、おい。やめろって! いてっ」
デッキブラシが男の頭に当たって、バシッという鈍い音が響いた。近くで見ると、男はかなり背が高くてとても派手な感じ。
痛そうに頭を抱えてしゃがみ込み男。その近くでポカンと立つ女の子。
膝がガクガク震えたけど、私は女の子の手を掴んで引っ張った。
「こっち!」
「え?」
戸惑うような女の子の声。顔を見ている余裕はなかった。
「いいから早く!」
そう言って、男から逃げるように走った。膝がガクガク震えているような気がするけれど、夢中で走った。
とにかく、ここから離れなきゃ。この公園は人気がなさすぎて、今度掴まったらかなり危険だ。人がいるところまで走るしかない。
その一心で女の子の手をギュッと握って走った。
大の男に立ち向かっていくのはとても怖かったけど、体が勝手に動いていたんだ。
「ちょ、ちょっと……待って」
公園の入口まできたとき、女の子が息を切らして私の腕を引っ張った。そして、足を止めて苦しそうに息を吸う。
もしかすると、強引に引っ張りすぎたせいで疲れちゃったのかな。そんな私もかなり息が切れて、心臓がバクバクいっている。
「桃ちゃんってば、強引すぎ……っ。はぁはぁ」
えっ?