目を凝らしてよく見ると背が高くて大きな男が、嫌がる女の子の手を引っ張ってどこかへ連れて行こうとしている。

「もう、離してってば! ほんとしつこいんだけど!」

「はぁ? おまえ、俺に敵うとでも思ってんの?」

腕を振り払おうとしても、当然だけど力では敵わない。

こ、これは、やばいよね。どうしよう。助けなきゃ!

でも、どうやって?

どうすればいいの?

なにか、助ける手立ては……?

悩んでいる間にも、女の子は今にも連れ去られてしまいそう。私はとっさに辺りを見回して、水道のすぐそばにあった『ある物』を目指して走った。

テンパっていたせいで自転車を放り出してきてしまった。そのせいで自転車が倒れる大きな音がしたけど、言い争う二人の耳には届いていないようだ。

水道のそばまでくるとなぜかそこに置いてあったデッキブラシを掴んで、今度は二人の元に駆け寄った。

「ちょっとあんた! 嫌がる女の子に、なにしてんのよ!」

無我夢中だった。力のかぎりデッキブラシを振り回して、男を攻撃する。

「え? うわっ!」

ブンブンとデッキブラシを振り回すと、空を切る音が耳に届いた。それほど力がこもっていたんだと思う。