早く気づけよ、好きだって。


信号はなかなか青にならず、ついに麻衣ちゃんの真うしろまできてしまった。

麻衣ちゃんは一人のようだ。スマホを操作しながら、信号待ちをしている。

「そういえば、桃のクラスって英語はどこまで進んだ?」

蓮の声に反応したのか、私の名前に反応したのかはわからない。麻衣ちゃんがゆっくりと後ろを振り返った。

そして、私と蓮の顔を交互に見つめる。

「大上さんじゃん。おはよ」

蓮はサッと王子様スマイルを浮かべて、麻衣ちゃんに微笑む。麻衣ちゃんは私を見てビックリしたように目を見開いていたけど、蓮に声をかけられたことでハッと我に返った。

「お、おはよう、須藤君」

ビクビクしたような麻衣ちゃんの声に、胸がキリキリと締めつけられる。

「桃と大上さんって、仲良かったよな? 一緒に行く?」

「え? いや、あの、でも」

戸惑うような麻衣ちゃんの声。

うまく息が吸えない。麻衣ちゃんの顔を見ることができなくて、逃げ出したい気持ちに駆られる。

だって、またなにか言われちゃう……。

今度はなにを言われるんだろう。

どう思われているんだろう。

これ以上嫌われたら……。

そんな感情が頭の中を支配する。

「わ、私、今日用事があって! 早く行かなきゃいけないんだった! 先に行くから、二人はゆっくりきて! じゃあね!」

信号が青に変わったタイミングを見計らって、私は全速力で駆け出した。

「はぁはぁ」

人の波をすり抜けて、学校へと向かう。走っているせいなのか、動悸がする。ドクンドクンという音が聞こえてくる。

このままで、いいのかな。逃げたままで、本当にいいの?

答えは出ないままだ。

でも、本当はわかってる。心の奥底では、わかってる。このままじゃダメだっていうことは。逃げたままでいるのは、よくない。

わかってる。わかってるけど、また拒絶されたらと思うとこわくて踏み出せない。

だから……今の私には逃げるという選択肢以外他になかった。