「蓮……聞いてる? いくら私たちが家族で兄妹みたいだからって、ハグはないよハグは」

「家族、か……兄妹ね」

そう言ってため息を吐いた蓮の声は、どこか傷ついているようにも聞こえた。それと同時に蓮の身体がゆっくりと私から離れる。

熱のこもった瞳で、まっすぐに私を見下ろす蓮。

なぜだかドキッとした。

「俺は……桃のことを一度もそんな風に思ったことはないんだけどな」

「え……?」

「女としてしか、見たことないから」

「お、女として……って。またまた、そんな冗談言っちゃってー!」

熱いまなざしに、ほんのり赤く染まる頬。冗談には見えなかったけど、冗談だと思いたかった。そうやってごまかす以外に、思いつかなかったんだ。

「冗談じゃねーよ。小さい頃から、ずっと桃のことが好きだった」

「え、えー……。いきなりそんなこと言われても」

「人の話は最後まで聞けよ。好きだったって、過去形にするつもりだから。今日はそのけじめをつけたかったっていうか、隠し続けるのも限界だし、言ってスッキリしたかったんだ」

蓮はスッキリしたような表情を浮かべている。だけどその瞳は、とてもさみしげに揺れていた。