「たくさんひどいこと言ったけど、あれは本心じゃないよ! 蓮のことは家族のように大事な存在だと思ってるし、話せなくなってすっごいさみしかった!」

小さい頃から兄妹のように育ってきたから、蓮がいない環境に慣れなくて。朝家を出た時、チラチラ蓮のことを気にしてた。毎日数分間ドアの前に立ち止まって、蓮が家から出てくることを期待してた。

「もう一度、前みたいに蓮と仲良くしたい。ダメ……かな?」

下から蓮の顔を覗きこみ、勢いのあまり両手で蓮の手を掴んだ。そして許してくれることを願いながらギュッと握る。

蓮の身体がかすかに揺れた。私の行動にビックリしているのか、固まっている。それでも私は蓮の目を見つめ続けた。

しばらくするとギュッと手を握り返されて、今度は逆にその手を取られた。そして力強く引き寄せられる。目の端に映った蓮の顔が、少し赤いような気がした。

「きゃあ」

思わず小さな声がもれてしまったのは、引き寄せられたままの勢いで抱きしめられたから。おでこがちょうど蓮の胸に当たって、背中には蓮の腕が回される。

「れ、ん……?」

なんで、こんなこと。

「ダメなわけ……ないだろ。俺のほうが、もう嫌われたかもって、不安だった」

切実な蓮の声。こんなに弱りきった蓮の声を聞くのは初めてだ。