水野君が惚れるのもよくわかる。
いいな、瑠夏ちゃんは。
きっと瑠夏ちゃんには悩みなんかなくて、傷ついた時にはいつも水野君がそばにいてくれるんだよね。
困った時は助けてくれるし、どんな時も駆けつけてくれる存在。
残念ながら、それは瑠夏ちゃんに対してだけだよ。その中に私は含まれてないの。
「あ、ねぇねぇ。あの時聞きそびれちゃったけど、春ちゃんのことどう思ってる?」
「ど、どうって……」
なんでそんなこと聞くの?
水野君が大切に想ってるのは瑠夏ちゃんだよ。
それがわからないの?
「少しも好きじゃない?」
だから、それを聞いてどうするの?
なにが言いたいの?
どうしたいの?
胸の奥底から嫌な感情が湧き上がってくる。どうしてこんな気持ちになるんだろう。
私って、こんなに性格が悪かった?
べつに瑠夏ちゃんは変なことを言ってるわけじゃないのに、どうしてこんなにモヤモヤするの?
一緒にいたくないって思うの?
幸せそうな瑠夏ちゃんを見てると、とても……イライラする。
あー、私って本当にどこまで性格が悪いの。
でも、でも……っ。
「そんなこと聞いて、楽しい? 知ってどうするの?」
自分でもビックリするぐらい低い声。
「桃ちゃんに協力できるかなって。二人はお似合いだと思うし」
「そういうのを余計なおせっかいって言うんだよ。正直、うざい」
イラッとして語尾が強まった。
「え、あ、ごめん。そんなつもりじゃ……」
瑠夏ちゃんは申し訳なさそうにしている。
その時、電車がちょうど最寄りの駅に着いた。これ以上話していたくなかったから、ちょうどよかった。
瑠夏ちゃんの顔を見ずにそのまま電車を降りる。
今まで家族以外の誰かに対して、ここまで言ったのは初めてかもしれない。
でも、瑠夏ちゃんが悪いんじゃん。人の気持ちも知らないで、のんきにそんなことを言うから。