「桃ちゃん、これから時間ある?」
「え?」
「付き合ってほしいところがあるんだ」
付き合ってほしいところ?
「そんなに遠くないんだけど、都合どうかな?」
瑠夏ちゃんはそう言って笑っているけど、なぜかとてもさみしげな表情を浮かべている。
「どうして私?」
だって私と瑠夏ちゃんはまだそんなに親しくもないわけで、友達と呼べるかどうかもあやふやなのに。
「春ちゃんのことを抜きにしても、桃ちゃんと仲良くしたいって思うからだよ」
「……っ」
私は……私は。
瑠夏ちゃんに対して、モヤモヤしている。ドロドロした気持ちが胸に渦巻いて、瑠夏ちゃんといるとみじめな気持ちにさせられる。
「ごめんね、今日は用事があるの」
だから嘘をついた。
「そっか、急だもんね。ごめんね、いきなり。じゃあまた誘うね。あ、春ちゃんとも仲良くしてあげてね? ほんと、悪い人じゃないからさ! それに、困った時は力になってくれると思う」
瑠夏ちゃんに言われなくてもわかってるよ。水野君は本当はとても優しくて、誰よりも人のことを想ってるって。
瑠夏ちゃんに悪気がないことはわかっているけど、水野君のことを一番知ってるのは私だと言われているようでイライラする。
「それと、また三人でどこかにお出かけしようね。あ、桃ちゃんは春ちゃんと二人のほうがいいかな?」
なんて言いながら、瑠夏ちゃんはからかうようにニヒッと笑った。
無邪気な笑顔がかわいい。きっと水野君もこの笑顔に弱いんだろうな。