あ、あれ?

いつもなら立ち止まって話してくれるのに。

無視……された?

気づかなかったのかな?

いやいや、思いっきり目が合ったよね?

この状況で聞こえなかったっていうのは、ちょっと考えにくい。

「マジありえなーい! 話しかけてこないでって感じー!」

背後からそんな声が聞こえて、足が止まる。

「だよねだよね! うざー!」

廊下はワイワイガヤガヤしているのに、その声はやけに耳に響いた。

麻衣ちゃんの声ではないし、もしかすると私に言ったんじゃないかもしれない。でもなんだか背後からチクチク視線を感じるような……。

いやいや、気のせいだよね。

でも、なんでだろう。ヒリヒリと胸が痛むのは。

やけに自分のことのように思えてしまって、背筋が冷えていくような、私の中でなにかがガラガラと音を立てて壊れていくような気がする。

気のせい、だよね?

私のことじゃ、ないよね?

そういえば最近、麻衣ちゃんたちは私の教室に一切来なくなった。

「よく平気で話しかけてこられるよね。ほんと無神経すぎるよ」

──ズキッ

胸が痛んだのは、それが麻衣ちゃんの声だったから。

「言えてるー! 図太いっていうか、人の気持ち考えてないよね!」

「最低なんだけど」

心臓がバクバクして、後ろを振り返ることができない。ひしひしと背中に突き刺さる視線から、明らかに私のことを言っているのがわかったからだ。